2015 年 8 巻 1 号 p. 65-76
本研究では,2008 年9 月のリーマンショック以降,海運会社等の船主の需要低下を原因とした買い手市場による造船市場の競争激化の状況のもとで,造船準大手A 社造船所(以下,A 社)で行われている原価企画(target costing)の現状と課題を指摘する。 2010 年6 月以降,A 社による取り組みが本格化した戦略的原価管理としての原価企画を中心とした新造船事業の採算性の改善が,当初同社が予定したレベルでの効果が創出されず,現在でも改善のための方策に関する議論が必要とされている。本研究では,この方策について明らかにする。また,ここでの方策が他の地域造船企業の再生モデルとして活用可能なレベルに到達することを目的とする。その際に,日本国内ないし中国・韓国における同業各社が,今日の造船グローバル競争の中,どのような競争戦略をとっているか,また,今後とるべきかという視点を通じて本研究の目的とするところを明らかにしていくものである。