Medical Mycology Journal
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総説
血液疾患におけるムーコル症の診断と治療
森 有紀
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2016 年 57 巻 4 号 p. J155-J162

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抄録

血液疾患の治療においては,化学療法や造血幹細胞移植後に生じる高度の好中球減少や免疫抑制により,侵襲性真菌症 (invasive fungal infections: IFIs) のリスクが高い.IFIsの主体はカンジダ症とアスペルギルス症であり,ムーコル症の頻度は決して高くはないが,IFIsの予防・治療の選択肢が広がるなかで増加傾向を示しており,抗真菌薬投与下でのブレイクスルーが散見されることもあって,その関心は高まっている.ムーコル症は,いったん発症すると急速に進行し致死的経過を辿ることが多く予後不良なため,早期診断・治療が不可欠だが,易感染性・易出血性などの観点から血液患者での侵襲的な手法による確定診断は概してむずかしい.特に,血液領域で多い肺型ムーコル症は,画像所見と臨床像が肺アスペルギルス症と酷似し,鑑別が困難な場合が多く,また現時点で有効な血清学的補助診断法もない.ムーコル症に対して抗真菌効果を有する薬剤が限られる中,わが国で利用可能なのはアムホテリシンB製剤のみであり,外科的切除も含めた包括的な治療戦略を考慮することが望ましい.

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© 2016 日本医真菌学会
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