抄録
1981年の夏、3日にわたっての瀬戸内海上での海上気象観測の資料に基いて、海面の熱フラックスを求めた。不安定な場合はDyerとHicksの式、安定な場合は近藤の式を用い、海面の粗度はCharnock型の式で表わしてバルク係数を求めた。顕熱と潜熱のフラックスの観測期間中の最大はそれぞれ 325 ly/日、212 ly/日であった。フラックスは顕熱と潜熱のいずれも午前は大きく、それに比較して午後は遙かに小さかった。船上では同時にPIBALと係留気球の観測もしたが、これらの観測結果からフラックスを求めることは困難であった。値のおよその大きさや変化の特徴が正しいかどうかだけでもほかの測定と比較して確かめたいのであるが、これまで瀬戸内海上の観測でフラックスを求めた例はない。しかし広島市の海岸で測定した結果を参照して妥当だし、フラックスの変化の特徴は物理的に理解することができるので、測定結果に大きな誤りはないと考えられる。観測期間中は台風の影響と思われるにわか雨や風向の急変があったが、概して晴で、日中は高温であったので、ここで得た値は夏のフラックスの大きさの目安となろう。