抄録
我々は、スペクトル法による低解像度の大気大循環モデルを作成した。このモデルは主にふたつの目的を持っている。一つは、長期予報にとって重要な10日以上の時間スケールでの大気大循環の長期変動の機構を調べるための道具として使うことである。もう一つの目的は力学的長期予報モデルの作成のための雛形として、モデルの諸性質を調べることである。
プリミティブ方程式を基本とし、水蒸気の混合比以外の従属変数は波数10の平行四辺形切断による球面調和関数に依って表現している。鉛直座標はσ系を用い、下部成層圏を含む10層としている。大気大循環にとって重要と思われる主な物理過程 (放射、対流、境界層での乱流輸送、地面の水文過程など) は、一般に広く使われているパラメタリゼイションを使っている。
等温静止大気から出発して、初期同化期間もふくめて約7年間の時間積分をおこなった。この論文では、後半の5年間について平均した1月と7月の平均状態について報告する。
冬季帯状流に見られる極夜ジェットと亜熱帯ジェットの分離、季節による平均状態の違いなど多くの点に於いて観測とよく対応している。しかし、圏界面の付近ではモデルの温度は低く、特に夏半球に於いて顕著である。熱帯域に於ける降水は観測よりも南北の広がりが大きく、ハドレー循環が弱い。冬季北半球30mbの温度、高度は、その振幅及び相互の位相関係に於いて観測とよい一致を示している。高度の定常波の振幅と位相及び季節変化は共に北半球ではよく再現されているが、南半球ではあまり良くない。