抄録
INSTAC-Iの航空機観測において、日本から赤道まで (0°~34°N) の中部対流圏 (高度4~5km) のエーロゾルの測定を行った。本論文では、特に熱帯域に注目し、半径0.15~5μmの粒子の粒径別個数濃度の緯度変化と、電子顕微鏡による個々の粒子の形態と元素組成について得られた結果を示す。エーロゾルの空間的な分布には、次の2つの大きな特徴がみられた。エーロゾルが低濃度で空間的に一様に分布している領域が認められ、この場合には、広い粒径範囲で硫酸粒子が卓越して存在していることがわかった。一方、粒径によらず濃度が高い領域が対流雲の存在と対応して存在した。この場合には、硫酸粒子に代わり、海塩粒子が卓越し、高濃度をもたらしていることがわかった。対流雲による海塩粒子の鉛直輸送は、熱帯中部対流圏におけるエーロゾル濃度の増加に大きな役割を果たし、中部、上部対流圏で形成される雲の微物理特性に影響を与えるものとして重要と考えられる。