遠洋上にある南鳥島(24.3°N, 154.0°E)で1993年2月から3月にかけて海洋性エアロゾル粒子を9試料採集した。電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分析器を用いて、半径範囲0.4-2.0 μmの個々のエアロゾル粒子について各試料あたり約100個の粒子の元素組成を分析した。その結果、89%から98%は海塩粒子で、硫黄が多く含まれた粒子や鉱物粒子はともに3%の個数割合であった。海塩粒子のうち5%はCl/Naの重量比が1以下であった。これは塩素が不足し粒子が変質したことを示している。変質した海塩粒子が25%も占めた試料があり、このときの流跡線はアジア大陸に近接した海洋大気から輸送されていた。人間活動で汚染された空気塊が長距離輸送されたとき、非均質反応によって海塩粒子が変質したと考えられる。