Papers in Meteorology and Geophysics
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雨季におけるスマトラ島付近の対流セルの発生メカニズム
瀬古 弘林 修吾斉藤 和雄
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2012 年 63 巻 p. 57-67

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抄録

   熱帯域の対流セルの発生メカニズムを、高解像度3次元非静力学モデルを用いて調べた。気象庁気候データ同化システムの再解析値を初期値・境界値に用い、格子間隔1kmのダウンスケール実験を行って、スマトラ島付近の対流セルを再現すると、対流セルは、下層の波の上昇流域が大きなスケールの収束域や弱い冷気塊の先端を通過するときに発生していた。大きなスケールの収束は、2kmより下層の気温を降下させてほとんど飽和した状態にし、弱い冷気塊の先端付近でもほとんど飽和していて、ともに対流発生に好都合な環境であった。下層の波の上昇流は、さらに気温を降下させて、湿度を増加させ、そこで新しい対流セルを発生させていた。この下層の波は、上昇流と気温の位相差が約90度であり、重力波の構造を持っていた。大規模な収束が対流の発生しやすい期間を決定し、下層の波の強さが対流の発生のタイミングを決定していた。

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© 2012 気象庁気象研究所
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