2016 年 66 巻 p. 15-24
気象庁(JMA)では大気観測のために1600~2100 nmol mol−1の濃度範囲のメタン(CH4)標準ガスを2000年以降使用しており、本研究ではその標準ガスのスケールと安定性について調べた。JMAの標準ガスは米国の海洋大気庁(NOAA)において質量比混合法によるNOAA04スケールを用いて検定された。NOAA04スケールは世界気象機関(WMO)のCH4標準ガス・スケールとして認定されている。NOAA04スケールで与えられた濃度値は、これまでJMAで使用していた質量比混合法のMRI/JMAスケールによる濃度値と比べて+1.3~−4.5 nmol mol−1の違いがあることが判明した。両スケールの差はCH4濃度の違いに依存しており、その関係は直線で回帰できることが分かった。標準ガスの安定性試験を行った結果、2本の標準ガスに濃度変化が起こっていたが、他の標準ガスの濃度は安定であることが確認された。気象研究所(MRI)との標準ガス比較実験は2000年~2014年まで継続し、WMOスケールへの変換や標準ガスの濃度変化の補正の妥当性を評価することができた。また、日本における「温室効果ガス観測のための比較実験(iceGGO)」プロジェクトでは計量機関による質量比混合法の値との比較結果が得られ、CH4スケールの検証に有効であることが分かった。