Papers in Meteorology and Geophysics
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ウィンドプロファイラとゾンデから求めた乱流エネルギー消散率の比較
星野 俊介小林 広征小池 哲司橋口 浩之川村 誠治足立 アホロ黒須 政信山本 真之梶原 佑介別所 康太郎岩渕 真海
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2016 年 66 巻 p. 39-55

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抄録

大気の乱気流は航空機の運航に重大な影響を及ぼす現象の一つであるが、機体側での対策は困難であるためこれを事前に察知し回避する必要がある。しかしゾンデ観測では時間分解能、気象庁のウィンドプロファイラ(WPR)ネットワーク(WINDAS,ただし2013年の更新以前)では観測可能高度の限界のため航空機の巡航高度における乱気流の常時監視には十分な性能を有していなかったため、実際に利用可能な乱気流のデータはほぼ航空機からの機上気象報告(PIREP)のみであった。これを受け、高高度・高分解能の観測が可能な次世代のWPRと乱気流検出技術の開発を目的とした京都大学生存圏研究所・情報通信研究機構・気象研究所による共同研究が2011年から2015年にかけて行われた。この一環として、2012年12月に開発中の次世代の1.3GHz帯WPRの試作機(LQ-13)(Hashiguchi et al., 2013)とゾンデによる集中比較観測が行われた。この観測のデータを用いて、WPRのスペクトル幅を用いる手法と、ゾンデデータからThorpe Analysisの手法のそれぞれによって求めた乱流エネルギー消散率(EDR)の比較を行い、WPRおよびWilson et al.(2014)の手法によりゾンデから求めたEDRは概ね整合的であるとの結果を得た。一方、ゾンデおよびWPRから求めたEDRとPIREPで通報された乱気流強度との対応についても調査した結果、定性的にはEDRは乱気流強度に対応して増大する傾向が示されたものの、データ数が十分とは言えず、有為差があるとまでは判断できなかった。また、EDRの値そのものはICAO Annex3で示された基準値よりも小さく、基準値の見直しが必要があると考えられる。

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© 2016 気象庁気象研究所
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