Papers in Meteorology and Geophysics
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2016年8月末の日本海の低気圧の発達と時間発展:中緯度の流れと台風1610号(Lionrock)の相互作用
北畠 尚子津口 裕茂
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2020 年 68 巻 p. 1-19

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抄録

本研究では、2016年8月31日に日本海で974 hPaまで深まった低気圧について、JRA-55再解析データを用いて解析を行う。この低気圧は台風第10号(T1610、アジア名Lionrock)を吸収して発達したように見えた。

この日本海の低気圧の深まりは、比較的弱い傾圧帯で生じ、上部対流圏の高渦位空気が傾斜した等温位面上を南東・下方へ移動してきたのに伴っていた。対流圏の中・下層の昇温も地上低気圧の深まりに寄与していた。低気圧の発達の最終段階には、上層トラフとT1610とのカップリングが生じた。T1610は、日本海の低気圧の発達初期にも、台風とその北の高気圧との間の南東風で下層湿潤空気を日本海へ輸送することで、低気圧発達に寄与した。日本海における潜熱解放は、その北東側の上層リッジを強化することでその後面のトラフとの間の渦度移流を強化することでも、日本海の低気圧の発達に寄与したと考えられる。

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© 2020 気象庁気象研究所
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