大気中の凝結核のうち何がどのように雲粒の核になったかを調べるために山岳(伊吹山山頂,富士山中腹)と航空機(関東地方上空)とで多要素(凝結核,雲粒,雲核,雲水など)の観測を行なった。
主として西向きの風の中で発生し消長する好晴積雲又は低い層積雲が観測対象であったが,その雲物理学的微細構造と気流の乱流状態と対応させるため,温位の微分係数やRichardson numberを求めて調べた。
それによると大気が不安定に近ずくにつれ大雲粒中の巨大海塩核を含む割合が減少した。又雲水中のCaや SO4 成分の Cl 成分に対する比(enrichment coefficient)は海水に比べて増大した。これは大気の安定度による効果であると考えられた。乱流中の雲粒子成長問題を解析するため従来の平均凝結成長や併合成長の理論とは別に,湿度変動の場の中で雲粒子がどのように成長するかにつきモンテカルロ法を用いて調べた。その結果,この変動場の中での巨大海塩核の成長につき観測事実が説明された。
他方,要雲素観測の器械の技術上の改良や,雲粒分布,雲核分析などについての種々なこまかい解析がなされた。