抄録
レーダーに受信される反射強度は,雲中に存在する降水粒子を媒介にしている。従って,降水粒子の種類,大きさ,および粒度分布の状態がわかれば,レーダーエコーの反射強度をより定量的に論ずることが出来る。それには実際に飛行機を使って雲中の降水粒子を観測する必要がある。そのためにふさわしい感部の基礎実験を行って,それを使って得た2,3の結果をのべる。実際の観測は人工降雨実験の中でおこなわれた。結論としては,
1)連続記録装置としてはアルミ箔(厚さ10μ位)が最も適していることを確めた。
2)小粗の検出限界は液相粒子と固相粒子によって違うが,前者は直径100μ,後者は直径60~80μ まで検出される。
3)ヴィルガの存在しない積雲でも,かなりの(検出可能な)降水粒子の存在する場合がある。
しかも,より大粒の粒子は下層よりむしろ上層に多くみられた。
4)-15°C以下の比較的弱い積雲中にも,雲頂附近に直径最大1mm位の霰状と思われる降水粒子が14中に約10個位の濃度で存在することもあった。
5)冬季の積雲からのヴィルガは2,3個ないし数個からなる多粒構造の粒子が多い。