日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会50周年記念大会
セッションID: 164-D
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一般発表(ポスター)
菌根菌が水を吸い尽くす―容器内で育成したクロマツ・ショウロ系において―
*明間 民央
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抄録
クロマツPinus thunbergii Parl.は、本州以南の海岸沿いを中心に分布し、砂丘を固定するため古くから各地で植栽されている樹種である。本種は菌根性樹木としても知られ、吸収根には外菌根が形成されるため林内には多様な菌根性きのこが発生する。ショウロRhizopogon rubescens Tul.はその一つで、主に植栽後間もない林分など攪乱の影響があるサイトに数年間発生しては消えていく性質を持った食用きのこであり、菌根や子実体の周辺には発達した菌糸束を形成する。この両者をクロマツの苗条部を露出させたプラスチック容器内で共生させ、容器内の有限の水が減少する過程を、菌根が形成されなかったもの6個体、形成されたもの11個体について調査した。容器には外寸18×64×137mmの透明スチロール製のものを用い、側面を黒く塗って光を遮った。上下は観察のため透明としたが、容器を積み重ねることで遮光し、最上段にはアルミ箔で包んだダミー容器を置いた。各容器には素寒天50mlを入れた上に湿らせた脱脂綿を置いてさらにその上にろ紙を敷いた。発芽後1ヶ月のクロマツ実生の根にアルギン酸ナトリウム水溶液に懸濁させたショウロの担子胞子を付着させ、希塩酸でゲル化することで接種を行ってろ紙の上に置き、苗条部を容器の蓋に設けた切り込みから外部に出した状態で25°C連続光下で育成した。その結果、接種後90日目に総重量が同じになるよう水を与えた後50日ほどは両者の重量に目立った差はなかったが、その後菌根形成群での重量減少が顕著になり、187日目の終了時点では有意水準0.001で有意な差が見られた。このことから、ショウロと共生するクロマツは、しないものに比べて、限られた水資源をより徹底的に利用し尽くす能力を持つことが示された。
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© 2006 日本菌学会
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