日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会50周年記念大会
セッションID: 163-C
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一般発表(ポスター)
マツタケ土壌培養法の開発
*吉田 幸太齋藤 千賀山田 明義
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抄録
 マツタケ Tricholoma matsutake (S.Ito & Imai) Sing.はマツ科植物と外生菌根を形成するとともに、シロと呼ばれる特有の菌糸体構造を土壌中に発達させている。このシロを構成する菌糸体は菌根を通じて宿主の光合成由来の炭素源を吸収し、土壌中から窒素源を吸収していると考えられる。本研究では十分に伸長したマツタケ菌糸体を土壌中において短期間で得ることを目的に、2層培地を用いた培養法を検討した。
 300ml容の培養ポットに100mlの寒天層と200mlの土壌層(マツ林のB層土壌由来)を作成(滅菌処理済)し、境界面にマツタケ培養菌糸体を接種した。土壌層に窒素源(エビオス)をそれぞれ0、1、3.3、10g/lの濃度で添加し、寒天層に炭素源(グルコース)をそれぞれ1、3.3、10、33.3g/lの濃度で添加した。また、両層の上下を入れ替えた条件も作製し、計32通りについて5反復調製して20°Cの室温下で培養した。約1ヶ月ごとに土壌中の菌糸伸長をポット側面から測定し、上層が土壌の系では4ヶ月経過時に上面から1_から_3cm程度の土壌を寒天培地上に接種し、マツタケ菌糸体の再分離を行った。
 この結果、用いた全ての組み合わせで菌糸体の伸長が見られ、エビオス無添加または、グルコース1g/lの区を除く全てのポットで再分離できた。グルコース1g/lの条件では、エビオス3.3g/lとの組み合わせでのみ菌糸体が再分離できたことから、グルコースとエビオスの比率が土壌中での菌糸体生長に影響を与えることが示された。また、エビオス10g/lの条件において、グルコース10g/lまたは33.3g/lの時に他の組み合わせでは見られない帯状に密集した菌糸体構造が観察された。これは、野外で見られるシロに類似の構造かもしれない。今後、菌糸伸長の良好な土壌をポットから取り出し、オープンな条件下で菌根合成を行う予定である。
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© 2006 日本菌学会
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