抄録
日本では異種寄生性Tranzscheliaサビキンとして、T. asiatica, T. discolor および T. pruni-spinosaeの3種が知られている。そのうち、T. asiaticaがウワミズザクラ(バラ科、サクラ属)に夏胞子・冬胞子世代を形成し、スハマソウ(キンポウゲ科、ニリンソウ属)に精子器・さび胞子世代を形成することが知られている。Tranzschelia discolorはスモモとモモに夏胞子・冬胞子世代を形成するが、精子器・さび胞子世代は不明のままである。Tranzschelia pruni-spinosaeは、ウワミズザクラとイヌザクラに夏胞子・冬胞子世代を形成することが知られており、ニリンソウ属のイチリンソウ、ニリンソウおよびスハマソウに精子器・さび胞子世代を形成すると推定されてきた。しかし、野外観察と人工接種試験の結果、Tranzschelia pruni-spinosaeの精子器・さび胞子世代は、キクザキイチゲに形成されることが明らかになった。これまでの接種試験で、ニリンソウ上のAecidiumは、Ochropsora nambuana(=Ceraceopsora elaeagni)の精子器・さび胞子世代であることが明らかになったいっぽう、イチリンソウ上に精子器・さび胞子世代を形成するサビキンの夏胞子・冬胞子世代宿主は未だ不明のままである。