Pseudolachnella 属は1936年P. scolecospora をタイプ種として創設された分生子果不完全菌類の一属で,現在まで世界で7種,日本からは4種が記載されている.本属は一般にササ・タケ類を宿主とし,多数の剛毛を有する分生子果,両端に付属糸を持つ多隔壁の分生子で特徴づけられる.
各地で行った採集調査の結果,以下の3種が新種であると考えられたので報告する.
・Pseudolachnella sp. –1
岩手県・モウソウチクより分離.糸状から紡錘形の分生子に6-7隔壁を有し,両端に1本の分枝しない付属糸を持つ.本種はP. setulosa に類似するが,分生子が短くて幅広であり,長い付属糸を持つ点で異なる.
・Pseudolachnella sp. –2
鹿児島県屋久島・メダケ類より分離.円筒形の3隔壁分生子は両端に2-4本の分枝しない付属糸を持つ.本属で3隔壁の分生子を有するものはP. scolecospora とP. indica が知られているが,これらの種は付属糸を1本ずつしか持たないため別種であると考えられた.
・Pseudolachnella sp –3
奈良県・ササ類より分離.紡錘形から楕円形の3隔壁分生子で,まれに分枝する複数の付属糸を両端に有する.分生子は長さ15-20μmと小型で,付属糸を複数持つ点が既知種とは異なった.
本研究によってPseudolachnella 属に新たな3種が追加され,日本産の本属は計7種となった.現在は上記3新種に既知種を加え,rDNA-ITS 領域に基づき分子系統を解析中である。