日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第52回大会
セッションID: S2-3
会議情報

えっ!こんなところにこんなにいるの?!-卵菌類の多様性-
海生卵菌Halophytophthoraの多様性
*中桐 昭稲葉 重樹外山 香子謝 松源
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
Halophytophthora属菌はマングローブなどの汽水域を中心に,落葉などの植物基質を腐生的に利用して生息している卵菌である.無性生殖ではPhytophthora属に見られるような卵形の遊走子嚢および腎臓型~球形,2本鞭毛の遊走子を形成し,有性生殖はホモタリック種で卵胞子形成が観察されている.生態的には,汽水環境の塩分濃度に適応した生育性状を示すとともに,変動する塩分濃度や温度に反応して遊走子を放出するなど,マングローブ汽水域の環境に適応した性状を備えている.これまでに 15種2変種が記載されているが未記載種も多い.本属は無性生殖器官である遊走子嚢の形態,性状に多様性が見られ,それらの形質の系統分類学的価値を評価することは本属の分類だけでなく,卵菌類の系統を考察する上で興味深い.本研究では,分離株を材料に,LSU rDNAおよびCOX2遺伝子を用いて系統解析を行い,Halophytophthora属菌の分類と系統位置について考察した.その結果,Halophytophthora属菌はPeronosporomycetidae(ツユカビ亜綱)の中にいくつかのまとまりをつくって広がる多系統群であり,それぞれの系統群は,_丸1_遊走子嚢にvesicleを持つもの,_丸2_遊走子嚢開口部にoperculumを持つもの,_丸3_遊走子放出時に押し出されるプラグを持つもの,_丸4_遊走子嚢表面にspineを持つもの,などに特徴付けられる菌群のほか,Phytophthora-Peronospora系統群の中に含まれる菌群として認識され,それぞれが別の属として扱われるべきものと判断された.ツユカビ亜綱の中のこれら菌群の位置と、Phytophthora, Pythium, Lagenidiumなど他の属との関係について考察する.
著者関連情報
© 2008 日本菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top