抄録
担子菌類の子実体形成には温度と光が重要であり, 子実体の発生誘導, 及び形態形成に重要な影響を及ぼす. エノキタケ(Flammulina velutipes)に暗黒下で低温処理を行った結果, 傘が未分化な子実体(ピンヘッド子実体)を形成した. すなわち,エノキタケは低温のみで子実体原基の発生誘導が可能であること,及び暗黒下では傘が分化しないことが確認された. 二次元電気泳動により, 子実体形成過程で発現するタンパク質を解析したところ, 子実体形成過程で発現量の変化するタンパク質を特定することが出来た. その中には, エノキタケで報告があった遺伝子(C1)のN末端と相同性が高いものが複数含まれていた(FBA1~4). 次に暗黒下温度低下により発現するタンパク質の発現挙動について解析した. その結果, 子実体形成過程で発現する多くのタンパク質は, 温度低下により発現誘導が起こることが明らかになった. 特に, 子実体形成過程に重要な役割を果たすと考えられるFDS遺伝子が温度低下のみで発現が誘導されることが明らかになった.