日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第55回大会
セッションID: A10
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Xylobolus spectabilisの分子系統解析に基づく分類学的位置づけ
*山本 絵里
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抄録

Xylobolus 属 (ベニタケ目ウロコタケ科) は,子実体が背着生から半背着生,木質,子実層表面に顕著な有刺糸状体を持ち,白色孔状腐朽を行うことで特徴づけられる.本属は有刺糸状体を多数形成することに基づきStereum 属から分離された.本属には形態的にStereum 属と類似した種が含まれ,分子系統解析でも類縁関係が支持されている (Larsson and Larsson 2003).Xylobolus spectabilis (モミジウロコタケ) は顕著な有刺糸状体を持つことを理由にStereum 属からXylobolus 属 に移された種である.しかし,それ以外の形態形質がStereum 属と類似しているため,Xylobolus 属として扱うには疑問が残る.そのため本研究ではStereum 属とXylobolus 属の塩基配列を用いた分子系統解析に基づく,X. spectabilis の分類学的位置を明確にすることを目的とした.本研究では日本産Stereum spp. およびXylobolus spp. の菌株から得たnrDNA LSU (D1-D3) およびITS領域の塩基配列を用い,Genbankより取得した塩基配列を加えて,最節約法および近隣結合法により解析した.得られた系統樹では,Stereum spp. およびX. spectabilis からなるクレードと,Xylobolus spp. の2つのクレードが見出された.前者のクレードを構成する種は子実体が半背着生で革質,白色腐朽を示し,後者はXylobolus 属の特徴を有す種で占められたため,この2つのクレードは形態形質や腐朽型でも区別された.一方,顕著な有刺糸状体を持つ種はどちらのクレードにも含まれていた.以上より,有刺糸状体はこの2つの属を区分する形質にはなりえず,本種をStereum 属に所属させるのが妥当であると判断し,学名として旧来使用されていたStereum spectabile Klotzch を提案する

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© 2011 日本菌学会
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