抄録
(目的)近年きのこの分類は形態的なものからDNA分析にもとづく分類体系に変化してきている.演者はアンズタケ類似きのこ子実体の脂肪酸組成の分析を行い,アンズタケ目きのこには共通してdehydrocrepenynic acid(以下DCAと略す)が存在していることを認めてきた.そこでこれらを再確認するとともに,アンズタケ目きのこと形態の類似しているきのこ,ならびにSistotrema属,Botryobasidium属きのこの菌糸体を用いDCAの存在を検討した.
(方法)アンズタケ目のきのことしてはアンズタケ属,クロラッパタケ属,カレエダタケ属,カノシタ属,シラウオタケ属きのことSistotrema confluensの子実体ならびに菌糸体としてSistotrema属きのこ2種S.brinkmanni,S.muscicolaおよびBotryobasidium subcoronatumを用い分析を行った.脂肪酸組成の分析は,子実体,菌糸体よりクロロホルム:メタノール(2:1)混液で脂質を抽出後,塩酸メタノールでメチル化しガスクロマトグラフィーで行った.DCAの同定はガスクロマトグラムの保持時間やGC-MSにより行った.
(結果)アンズタケ属,クロラッパタケ属,カレエダタケ属,カノシタ属のきのこにはいずれもDCAが存在していた.シラウオタケにも28%のDCAが認められた.また,シラウオタケには量的には少ないが,DCAの中間生成物質と考えられるcrepenynic acidの存在も確認された.Sistotrema confluensは分類的にカノシタ属に近くDCAも50%以上含まれていた.S.brinkmanni,S.muscicolaの菌糸体にもDCAが5‐13%含まれていたが,Botryobasidium subcoronatumにはDCAは全く認められなかった.Botryobasidium 属はアンズタケ目の他のきのことは分類的に異なる可能性が考えられる.