日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第55回大会
セッションID: C26
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ネクトリア科における分生子果の多様性とその進化
*廣岡 裕吏Walker DonaldRossman AmySamuels GaryChaverri Priscila
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抄録

分生子果は,主に分生子殻・分生子層・分生子柄束・分生子子座に区分される.Saccardoはこの特徴を用い,不完全菌綱を4目に分類し,その後この体系を基に3綱が設立された.しかし,これら分生子果の形態は,宿主や環境によって不安定であることが確認され,徐々に消滅しつつある.ネクトリア科には,分生子殻・分生子柄束・分生子子座をもつ種が存在し,特にNectria属は,この3つすべての分生子果を形成する.Seifert (1985)は両世代の詳細な形態観察から,本属のアナモルフはTubercularia,1属であると提案している.そこで,このNectria属菌および他の13属のネクトリア科におけるアナモルフの形態観察,分子系統解析およびancestral character state reconstructionを用い,分生子果の多様性とその進化について検討を行った.act,ITS,LSU,rpb1tef1tubを用いた分子系統解析の結果,Nectria属菌は他の13属のネクトリア科を跨いで,側系統群(clade I ,II)を形成した.他のネクトリア科の属から大きくそれたclade I は,宿主上で分生子殻を形成した.タイプ種であるNectria cinnabarinaを含むもう1つのclade II は,他の属と姉妹群を形成し,このclade II と他の属は主に分生子柄束と分生子子座を形成する種であった.Clade II 内には4つのsubcladeの存在が確認された.そのうち,subclade II-3は分生子柄束を持つ種,II-4は分生子子座を持つ種として区別された.驚いたことにsubclade II-2のNectria antarcticaは,通常の分生子子座だけでなく,凹んだ分生子子座および未熟な分生子殻を形成した.また,subclade II-2の日本産Nectria sp.は,子座内に分生子殻を形成した.これらの結果から,Nectria属では分生子子座・分生子殻が,ネクトリア科では分生子殻・分生子柄束・分生子子座の形態が,ホモプラジーであると考えられた.

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© 2011 日本菌学会
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