2020 年 22 巻 1 号 p. 46-54
経路積分分子動力学法は粒子系の量子効果を露わに取り込むことのできる優れた計算手法の一つである.この手法の問題点であった計算コストの高さは近年の計算機の発展により解消しつつあり,並列計算との相性の良さとも相まって,様々な応用計算が見られるようになってきている.本稿では経路積分分子動力学法の最も重要なターゲットの一つである水素結合系に焦点を当て,水素結合の構造と量子論的な運動エネルギーの関係を示し,原子核の量子効果を取り込んで計算することの意義を紹介する.