アンサンブル
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特集「トライボロジー,流体」
最近の研究から
  • 森 義治
    原稿種別: 最近の研究から
    2024 年26 巻3 号 p. 269-275
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2025/07/31
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    細胞内の様々な生命現象においてタンパク質はその機能を発揮し,多くの役割を果たしている.このような機能を担うタンパク質自身はリボソームと呼ばれるタンパク質・核酸の巨大分子複合体により合成されている.タンパク質の合成過程においては様々な分子が関与することが分かっているが,核酸分子であるtransfer RNA(tRNA)が果たす役割は大きい.本研究においてはtRNA分子がリボソーム内においてどのように安定化されているかを理解するために粗視化分子動力学シミュレーションを実行し,解離経路上の自由エネルギー計算を行った.その結果,tRNAはリボソーム環境に存在しているいくつかの分子により安定化されていることが分かったが,その中でもリボソームタンパク質と呼ばれる分子に着目した.リボソームタンパク質のC末端領域に存在する荷電性アミノ酸残基はtRNAの安定化に重要な役割を果たしていることが分かった.このような知見は,リボソームという生命に普遍的に存在する分子を通じて生物における分子進化の理解に寄与することも期待される.

  • 宮崎 裕介
    原稿種別: 最近の研究から
    2024 年26 巻3 号 p. 276-280
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2025/07/31
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    粗視化分子シミュレーションは,全原子シミュレーションでは到達できない時間および空間スケールの現象を解析するために有用なツールである.本稿では,生体分子系を対象に開発した粗視化分子力場について紹介する.粗視化分子力場の開発では,参照データとして全原子シミュレーションから取得したデータと実験データの両方を使用し,ボトムアップとトップダウンを組み合わせたアプローチを用いていた.完成した粗視化分子力場では,アミノ酸の膜透過自由エネルギーや膜表在タンパク質のアンカリング,膜貫通タンパクの二量化自由エネルギーなどの全原子シミュレーションによる計算値や実験値をよく再現することを確認し,膜タンパク系について定量的な解析が可能な粗視化分子力場の構築に成功した.

  • 永井 哲郎, 吉川 信明, 陣内 亮典, 木村 将之, 岡崎 進
    原稿種別: 最近の研究から
    2024 年26 巻3 号 p. 281-288
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2025/07/31
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    複雑な構造を持つ「不均一系」の内部で分子拡散により生じる物質輸送は,様々な材料や環境で生じる普遍的な現象であり,ミクロ機構の解明が色々な場面で求められている.しかしながら,全原子分子動力学シミュレーションにより直接現象を追跡することは,不均一系で生じる物質輸送の時定数が長いため困難である.そこで,全原子動力学計算と動的モンテカルロ法を組み合わせることにより新たな研究手法を開発し,不均一系で生じる物質輸送の研究を行ってきた.特に,高分子電解質膜におけるガス透過の経路などを明らかにしてきた.本稿では,開発した手法と高分子電解質膜への応用研究について概説する.最近では,より大規模な系に手法を応用するために,機械学習モデル展開の応用を提案している.この概要についても簡単に触れたい.

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