2025 年 27 巻 2 号 p. 119-128
液体・溶液の構造や性質を分子間相互作用など微視的な立場から理解するには,統計力学に基づく理論的手法(古典流体の密度汎関数理論や積分方程式理論など)や分子シミュレーションが有用である.理論的手法は,シミュレーションが抱える有限サイズ効果やサンプリングの制約を回避できる.一方で,理論に含まれる近似の妥当性を慎重に検証する必要がある.例えば,積分方程式理論に含まれる近似の妥当性を検証するには,理論の定式化と整合するグランドカノニカル・アンサンブル下でのシミュレーションとの比較が適している.しかし,グランドカノニカル・シミュレーションは計算コストが高く,実際の採用例は限られているのが現状である.本稿では,適切なアンサンブル選択の重要性を論じ,液体理論の近似精度を評価する手法として,グランドカノニカル・モンテカルロ(GCMC)シミュレーションの活用法を解説する.最後に,積分方程式理論の近似精度を評価した研究例について紹介する.