抄録
平板乱流境界層の既存の実験データを, 主に外層領域の速度分布に着目して再整理した.外層速度分布に対する速度尺度は, 摩擦速度よりも, 主流速度に排除厚さと境界層厚さの比を掛けた量, Ud= Ueδ/δ, の方が適切であることが分かった.運動量厚さに基づくレイノルズ数 (Re) が約2500以上のとき, Udとδに基づいて表した速度欠損分布はバッファー層の外縁付近まで良好な相似性を示す.また, 平均速度が壁面からの距離yのほぼ1/2乗に比例するとみなし得る領域が外層の広い範囲 (0.16 〓y/δ 〓 0.65) に渡って存在する.これより壁側の速度分布は対数直線分布で十分近似できるが, 従来の対数則の傾きはRe〓 2×104の範囲ではレイノルズ数に依存するようである. Re〓2000の低レイノルズ数域においては, 上述の相似性は成立しない.