抄録
楕円断面管路と長方形断面管路における層流の分散係数を解析的に求め, 断面形状の違いが分散係数の値にどう反映するのか広い範囲の形状比について考察した.
楕円断面管路と長方形断面管路について得られた無次元分散係数の理論値は形状比Arが1で最小値となり, 対数紙上ではAr=1に関して対称となる.しかしながら, Ar≠1であるときの無次元分散形数のArに対する挙動は, 楕円断面管路と長方形断面管路とで驚くほど異なる.前者では, Ar→∞あるいはA→0に近づくに従って単調に増加するのに対し, 後者ではこれらの極限において一定値に漸近するのである.このことは, 少くとも楕円断面管路における物質の輸送をG. I. Taylorの仮説にもとづく一次元の分散方程式で記述することは, 形状比が極めて大きい場合及び極めて小さい場合には妥当ではないことを示唆する.Ar=1として両者の比較を行うと, 正方形管路の無次元分散係数の値は円管の値に比べて大きい。断面形状の異った管路の分散係数を比較することにより, 層流の分散係数の形状比に対する変化特性が管路の断面形状に依存し, 大きく変化することを示した.