抄録
沿岸砕波帯における海塩粒子の輸送・拡散に関わる境界値問題を境界積分法 (選点法) で扱い, 汀線付近で観測された海塩濃度粒度分布を基に海面における海塩粒子フラックス分布を逆推定する方法について論じている.輸送・拡散方程式の影響関数 (基本解) として, 2つの近似的影響関数を用意した.2つの影響関数の主な違いは水平渦拡散効果を含むか否かにある.観測粒度分布を基にフラックス源分布を推定する問題は一般に非適切 (ill-posed) な逆問題となっており, 次の処置が必要である. (1) 推定値のデータ誤差への感度を緩和する方法として, 複数高度 (地表高度15m以下) の粒度分布データを用いる. (2) 誤差の許容範囲で目標粒度分布のモデルへの適合一データ同化を図る.推定法による海塩フラックス源の位置, フラックス強度の時間変動傾向は波浪計算 (SWAN) による結果と概ね一致する.