日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
2型糖尿病肝におけるインスリン抵抗性の病態と分子機構
篁 俊成御簾 博文金子 周一
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2011 年 100 巻 6 号 p. 1670-1676

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抄録

肝臓の脂肪化は肥満と独立してインスリン抵抗性と関連する.このことは日本人の糖尿病発症が肥満だけでは説明できず,軽度な肥満域から動脈硬化につながる代謝異常が増大することと関連する可能性がある.2型糖尿病に肥満症を伴った患者の肝臓では,解糖系,糖新生系,それらから派生するPentose phosphate cycle,中性脂肪合成系,脂肪酸合成・酸化系を構成する遺伝子群が協調的に発現亢進する.これらのプロファイルは糖・脂質由来の基質がミトコンドリアに流入することを示唆し,事実,ミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)を構成する遺伝子群が活性酸素関連遺伝子群の発現とともに2型糖尿病患者,とりわけ肥満症を合併する患者の肝臓で,協調的に発現亢進する.2型糖尿病患者肝臓の包括的発現遺伝子解析から同定した新規ヘパトカイン「セレノプロテインP」は,抗酸化作用を有するにもかかわらず,一部にAMPキナーゼ活性の抑制を介して,全身のインスリン抵抗性を増大する.

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© 2011 一般社団法人 日本内科学会
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