凝固因子製剤の有効性と安全性が向上する中で,血友病の止血治療は進歩し続けてきた.さらに,近年では利便性の高い新規製剤も登場し,治療目標が日常的な出血予防から,非血友病の人と同様の生活を送ることへとシフトしてきている.このような治療環境の変化を踏まえ,個々の血友病患者が適切な止血治療を受けられるようにするため,血友病の診療に携わるすべての医療従事者に伝えるべく,現在ガイドラインの改訂が進行中である.
血友病などの血液凝固異常症は有病率が低く経過が長いことから,レジストリでリアルワールドデータを収集することが治療の向上や安全につながる.2018年に日本血栓止血学会に血友病診療連携委員会が発足し患者レジストリ構築部会が設置された.2021年からは血液凝固異常症レジストリ運営委員会が実際の構築作業を進めた.2025年の患者登録を目指しシステムと環境の整備が行われてきた.まもなく開始されるレジストリを概説する.
血液凝固第VIII(IX)因子製剤の補充療法は,血友病性関節症発症を抑制させ,血友病患者のQOLを向上させた.一方,頻回静脈投与やインヒビター出現は課題であった.そこで半減期延長製剤や非凝固因子製剤が開発された.エミシズマブは皮下投与で長い半減期を有し,インヒビターに関係なく血友病A患者に出血抑制を示した.リバランス凝固の抗TFPI抗体製剤も上市された.治療薬の発展はさらなるQOL向上を期待させる.
血友病は血液凝固因子の遺伝子異常による出血性疾患である.重症例では,静脈注射で不足する凝固因子を補う治療が生涯必要であった.よって,疾患の治癒を目指した遺伝子治療の開発が進み,実際に欧米で上市された薬剤も登場した.遺伝子治療は1回の治療で数年以上も血中の凝固因子が維持されるため,治療の必要性が減じ,患者の生活の質,および疾患への意識を改善する画期的治療法として注目されている.
血友病患者のQOL(生活の質)は飛躍的に改善したが,血友病保因者の状況は身体的にも精神的にも十分に注目されていなかった.しかし,近年になって国内外で血友病包括医療に血友病保因者も取り込むべきという認識が定着しつつある.保因者問題の啓発により医療者の関心が高まることで保因者ケアが包括医療の一環として取り込まれれば,保因者の健康関連QOL向上のみならず,新たに生まれてくる血友病患者の命をも救う可能性もある.
重症血友病のほとんどは乳幼児期に発症するため,患者・家族と小児科医との関わりは密接となり,深い信頼関係が構築されていることが多い.そのため,小児科から内科へのトランジションの際には,主治医は治療法の標準化に基づき,患者の詳細な診療情報や社会的な問題点などを確実に引き継ぎ,患者の不安を軽減する必要がある.日本血栓止血学会の血友病診療連携システムや血液凝固異常症レジストリの構築により,今後小児科から内科へのシームレスな診療連携が期待される.
福井県は2020年時点では全国で唯一血友病診療地域中核病院の存在しない県であったため,地方における新規地域中核病院としての役割を考察した.当病院は,血液内科医と小児科医の連携だけでなく,包括外来を通じて血友病患者に必要な院内の多職種との連携を深めると同時に,地域の他施設との診療連携も進めてきた.当院での血友病診療の取り組みについての経緯,連携構築,実際の取り組みについて課題や将来展望等を報告する.
後天性血友病Aは高齢者に好発する後天性出血性疾患であり,多くの患者が初回出血部位に応じた診療科に最初に受診するため,早期発見には広く臨床家への疾患啓発が重要である.診断後に免疫抑制療法が実施されるが,高齢でADL低下例が多いため,出血死とならんで感染死が多く予後は不良である.近年,新たな止血治療薬や出血抑制薬の登場により治療戦略の多様性が増し,早期リハビリ介入と合わせて,予後の改善が期待される.
50歳,男性.6年前,鼻茸手術と気管支喘息.4カ月前に耳鼻科で鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎と診断され,2カ月前からデュピルマブ皮下注射開始.1週前から全身倦怠感,関節痛,38℃の発熱,頸部リンパ節腫脹あり受診.WBC 9,160/μl,好酸球14%(1,282個),CRP 4.84 mg/dl,MPO-ANCA 70.0 IU/ml(<3.5).胸部CTで肺炎所見あり,EGPAと診断しメチルプレドニゾロン500 mg/日・3日間を開始.その後プレドニン50 mg/日投与により,CRP 0.22 mg/dlまで低下し,臨床症状も劇的に改善した.デュピルマブは,アトピー性皮膚炎,難治性気管支喘息,鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎での使用増加が予想され,今後EGPAの発生増加も危惧される.
48歳男性.発熱,左眼瞼腫脹を主訴に受診,海綿静脈洞や内頸静脈に多発血栓,両肺多発結節影,脳膿瘍,眼窩脂肪織炎を認めた.咽頭炎は伴わず,歯性感染から波及したレミエール症候群と診断された.左眼失明するも,抗菌薬と抗凝固療法で治癒した.レミエール症候群は,“Killer sore throat”として知られているが,咽頭炎を契機とせず,頭蓋内に波及し重篤な転機をきたす疾患としての認識が重要である.
アレルゲン免疫療法(AIT)は,病因アレルゲンを投与することで,アレルギー症状を緩和する,あるいはアレルギーそのものを治癒させる可能性もある治療法で,皮下注射による免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)がある.喘息に対するダニSCITは,ダニ感作アトピー型喘息で呼吸機能が正常な症例が適応であり,喘息症状と気道過敏性を改善し,薬物投与量を減少させる.アレルギー性鼻炎にも効果あり,その結果,喘息症状の改善にも寄与する.ダニSLITは,アレルギー性鼻炎が保険適用疾患であるが,鼻炎合併喘息患者では使用可能である.さらにAITはアレルギー性疾患の自然経過を修飾することが示唆されている.AITは,新規アレルギー疾患発症を予防したり,新規アレルゲン感作を抑制したりする可能性が報告されている.またAITは標的アレルゲンだけでなく標的外アレルゲンで誘導される免疫応答も抑制し,さらにinterferon応答を増強することで下気道感染を抑制する可能性が示唆されている.
細菌性髄膜炎は急速に進行し生命を脅かす重篤な感染症であり,神経救急疾患として適切な早期対応が求められる.近年,その診療体制は大きな転換期を迎えている.一つは迅速診断技術の進歩であり,FilmArray®髄膜炎・脳炎パネルの実用化により約1時間での病原体同定が可能となった.しかし一方で,肺炎球菌における薬剤耐性化が進行しており,特にカルバペネム系抗菌薬への耐性率上昇が新たな課題となっている.これらの状況を踏まえ,患者背景に応じた適切な経験的治療の選択と,複数の抗菌薬の併用戦略の重要性が増している.さらに予防医学の観点からは,新たな結合型ワクチンの定期接種化や次世代ワクチンの開発が進められている.本稿では,これら診断・治療・予防の各側面における最新の進歩と課題について概説する.