79歳,男性.脱力・構音障害で救急要請,搬送された.搬送時に左上肢麻痺・構音障害・意識障害を認め,急性期脳梗塞として加療開始されたが,その後,神経所見は短時間で変化し,消失した.その後,野草を摂取した直後に,患者を含めた家族複数人に中毒症状が出ていたことが判明,ハシリドコロ中毒と診断した.
51歳男性が他院で梅毒血清反応が陽性となり受診した.病歴・症状から早期梅毒と診断した.また,来院1カ月前から頭痛があり問診を追加すると,同時期の健康診断で視力低下が,2週間前から聴力低下と耳鳴りがあった.髄液検査を施行し,細胞数上昇・蛋白の増加を認め早期神経梅毒の確定診断とした.早期梅毒に神経梅毒を合併しうることを認識し,梅毒の診断の際には疑わしい症状があれば髄液検査を行うことが重要である.
非がん性呼吸器疾患においては呼吸困難をはじめとする身体症状や抑うつ,不安といった精神症状の頻度が高く,適切な緩和ケアが必要である.しかし,非がん性呼吸器疾患患者に対する緩和ケアの提供は十分とはいえない現状がある.進行した病状の患者では,標準治療にも関わらず残存する呼吸困難に対してオピオイドが治療選択肢になるが,その有効性については一致した結論が得られていない.使用する際にはその投与方法・投与量について熟知しておく必要がある.精神症状に対しては,安易なベンゾジアゼピン系薬の使用は極力控え,呼吸リハビリテーションや心理療法といった非薬物療法を優先させる.意思決定支援に当たっては,非がん性呼吸器疾患の特徴を踏まえて,できるだけ早期に繰り返しアドバンス・ケア・プランニングを行うことが望ましい.