抄録
がんの予防と検診は,がん対策の第1・第2の砦であり,がん対策推進基本法においても重要な柱となっている.しかしながら,いずれも健康な人を対象とした介入であるので,罹患率・死亡率の相対リスク減少効果のみならず,絶対リスク減少効果や介入に伴う不利益についての定量的情報が必須である.米国予防医療サービス作業部会では,総合的利益の観点から予防介入についての推奨ガイドラインを示している.例えば,高リスク,かつ,副作用低リスクの人を対象としたタモキシフェンによる乳がん予防や50~74歳を対象とした2年毎のマンモグラフィー検診を推奨している.一方,一般の人を対象としたタモキシフェンによる乳がん予防は推奨せず,また,40~49歳を対象としたマンモグラフィー検診についても一律には推奨していない.それらの背景となったエビデンスを紹介すると共に,日本における予防・検診分野における質の高い無作為化比較試験の実施の必要性について提言する.