日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
悪性褐色細胞腫の診断と治療
成瀬 光栄田辺 晶代立木 美香難波 多挙中尾 佳奈子津曲 綾臼井 健田上 哲也島津 章
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2012 年 101 巻 8 号 p. 2330-2338

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抄録

褐色細胞腫は治癒可能な内分泌性高血圧と位置づけられる一方,その約10%を占める悪性褐色細胞腫は早期診断法および確立された治療法のない希少難治性がんである.厚労省研究班の調査の推計患者数は約300人である.初回手術時にはその約30%以上が良性と診断され,一定期間後に骨,肝臓,肺などへの転移および局所浸潤を認める.病理組織所見の組み合わせによるスコアリング,SDHB遺伝子変異が悪性診断に有用とされるが,精度,感度,特異度はさらに検討を要する.治療はカテコールアミンの過剰があればαブロッカーを基本とする降圧治療を実施する.悪性では131I-MIBGの取り込みが十分なら内照射,取り込みがないならCVD化学療法が一般的であるが,いずれもわが国では厳密には適応外で,かつ無効例でのセカンドライン治療はない.近年,キナーゼ阻害薬のスニチニブの有効性が注目されており,海外では臨床試験が進行中である.本疾患は希少疾患であることから,個々の施設で単独の取組をするのではなく,多施設の連携,協力にて取組むことが重要である.

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© 2012 一般社団法人 日本内科学会
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