2019 年 108 巻 6 号 p. 1205-1211
抗胸腺細胞グロブリン(anti-thymocyte globulin:ATG)+シクロスポリンA(cyclosporine A:CsA)による免疫抑制療法が確立されて以降,再生不良性貧血に対する治療戦略は長らく進展がなかった.しかし,2017年8月にトロンボポエチン(thrombopoietin:TPO)受容体作動薬のエルトロンボパグ(eltrombopag:EPAG)に再生不良性貧血の適応が追加され,同時にCsAが非重症例にも適応拡大されたことから,本邦においても,治療指針の見直しが行われた.EPAGは,造血幹細胞移植しか治療法がないと考えられてきた免疫抑制療法不応例に対しても,薬物療法のみによって輸血から離脱できる新たな選択肢をもたらした.さらに,初発例に対しては,従来の免疫抑制療法と併用することで,治療成績の向上が期待されている.一方,CsAの適応拡大は非重症例に対する外来治療の選択肢を増やしたことから,自己免疫疾患の特徴を有する再生不良性貧血においても,早期診断・早期治療の重要性が増している.