日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
腎疾患の遺伝子診断と遺伝子標的療法
野津 寛大
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2019 年 108 巻 8 号 p. 1598-1606

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抄録

小児期発症の腎疾患においては,遺伝性腎疾患がかなりの割合を占めており,小児期に末期腎不全へと進行する患者のうち,30%以上が遺伝性腎疾患を原疾患とすることが判明している.一方,成人領域においても,常染色体優性Alport症候群,遺伝性巣状分節性糸球体硬化症ならびに常染色体優性遺伝性尿細管間質性腎疾患等,これまで考えられていたよりもはるかに多い数の慢性腎炎患者が遺伝性腎疾患を有していたことが明らかになってきた.私たちは,X染色体連鎖型Alport症候群において,約400家系の遺伝子診断を手掛けてきた結果,さまざまな遺伝子型と臨床型の相関関係を明らかにすることに成功した.その結果,ナンセンス変異等のtruncating変異を有する場合,non-truncating変異を有する場合に比較し,明らかに重症の臨床像を呈することが明らかとなった.そこで,ナンセンス変異を有する場合は,エクソンスキッピング療法を行うことにより,3の倍数の塩基数の欠失変異に置換することで軽症化が可能であるという着想に至り,研究を進めている(日本医療研究開発機構 難治性疾患実用化研究事業 研究代表者:野津寛大).本稿では,遺伝性腎疾患における遺伝子診断の現状,X染色体連鎖型Alport症候群における遺伝子型・臨床型の相関を含めた臨床的特徴ならびに私たちが現在開発中の遺伝子標的療法(エクソンスキッピング療法)に関して解説する.

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© 2019 一般社団法人 日本内科学会
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