2006 年 95 巻 10 号 p. 2016-2020
慢性炎症性疾患では, 血清鉄低値を示すのにもかかわらず, 血清フェリチン値が正常から増加するという鉄代謝異常を伴った正球性から小球性の貧血 (anemia of chronic disorders, ACD) が発症する. この鉄代謝異常の分子機構の詳細は長年の間不明であったが, 最近, 炎症性サイトカインにより肝でヘプシジンというペプチドホルモンの産生が誘導されることが見出され, これこそがACDの病態の主要なエフェクターであることが明らかとなった. 本稿では最近解明されたACD発症の分子機構と治療法について解説する.