日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
血管炎症候群の病態と治療の新しい考え方
尾崎 承一
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2009 年 98 巻 10 号 p. 2601-2613

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抄録
血管炎は罹患血管サイズに基づき分類されてきたが,近年,抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎と結節性多発動脈炎に関する新たな分類アルゴリズムが提唱されている.本邦の血管炎患者数はANCA関連血管炎,特に顕微鏡的多発血管炎において増加が著しい.血管炎の発症機序としては液性免疫や細胞性免疫などの異常があるが,前者には免疫複合体,ANCA,抗内皮細胞抗体(AECA),抗リン脂質抗体が関与し,後者には病的自己反応性T細胞による肉芽腫形成性組織障害が関与する.近年,ANCAやAECAなどの研究が進んでいる.ANCAの病原性が動物実験により詳細に解析され,その分子機序が明らかにされている.AECAの対応抗原がプロテオミクスの手法で網羅的に解析されている.血管炎の治療はステロイド薬と免疫抑制薬の併用療法が主体であるが,それらの副作用を回避するために,より安全な薬物療法を検証する前向き臨床試験が行われて,エビデンスに基づく治療法が提唱されてきている.
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© 2009 一般社団法人 日本内科学会
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