日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
肝移植医療の最前線
市田 隆文
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2010 年 99 巻 2 号 p. 349-357

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抄録

わが国で1991年に始まった生体肝移植と1999年に始まった脳死肝移植は肝移植医療の車の両輪と言われながらも,実際は前者が5,000例以上,後者が70例以下のアンバランスな医療形態を示している.数カ月以内に死亡が予想される末期肝不全患者が平均5年生存率75%を示すこの肝移植医療は適切なドナーと医学的適応を明確にすると,再生医療が成熟するまでは必要不可欠な医療であることに間違いはない.肝移植医療の最新の問題点はC型肝炎ウイルス陽性レシピエントの生存率の低下,原発性硬化性胆管炎の5年を過ぎてからの生存率の低下など憂慮すべき点が挙げられるが,一方で,B型肝炎ウイルス陽性レシピエントの再感染防止の確立,肝細胞癌に対するミラノ基準遵守による成績の向上など優れた業績が見られるようになってきた.さらに,劇症肝炎に関しては圧倒的に移植医療が内科的治療を凌駕していることも顕著なことである.今後はイスタンブール宣言に基づく,適切な脳死肝移植の推進が国際的にも重要なこととなり,生体肝移植一辺倒の医療を転換すべき時期に差し掛かってきていることを認識しなければならない.

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© 2010 一般社団法人 日本内科学会
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