日本内科学会雑誌
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Myokardoseに関する臨床的研究
神ノ口 昭久
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1960 年 49 巻 7 号 p. 830-841

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抄録

全身の新陳代謝障害,殊に蛋白代謝障害に基づく心筋の機能障害を究明する目的で,肝疾患,癌性疾患,貧血,腎疾患における血清蛋白像の変動と心電図所見を中心にして,これらの相互関係とMyokardoseとの関連性について檢討した.その結果,血清蛋白像の変動はAL, γ-GL, A/G, A/γ,又はTPに著明であつて,これらをDysproteinämieの指標となし得た.心電図変化はT平低・陰性を最も高率に認め,主としてQT延長,低電位差, ST降下等の心室群変化が多く,刺激生成および傅導障害として心房粗動, PQ延長,右脚ブロック等を認めた.心電図所見とDysproteinämieの間には密接な関連性があり, Dysproteinämieが高度になるにつれて心筋障害は高率に発現し,心筋障害が高度な程血清蛋白像の変動は著明となる傾向が認められ, Dysproteinämieの軽度な急性肝炎,貧血,比較的早期の癌性疾患,慢性腎炎の心筋障害が軽度であり,高度のDysproteinämieを呈する慢性肝疾患,末期の癌性疾患,ネフローゼ症候群の心筋障害が重篤であることを認めた.しかしながら少数例においてはDysproteinämieと心筋障書所見とが必ずしも平行せず, Myokardoseの発生はDysproteinämieの程度のみならず,存続期間も重要な役割を果すことを認めた.又Myokardoseの囘復は基礎疾患の治療によつてDysproteinämieを是正することが重要であるが, Dysproteinämieが長びくと心筋障害は不可逆的な変化となり, Myokardoseの予後は不良となることが認められた.

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