日本内科学会雑誌
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膵外分泌機能低下を伴つたSjögren症候群の1例-慢性甲状腺炎,強皮症,高脂血症,十二指腸潰瘍の合併例
大沢 奈津子根本 俊和乾 純和古川 充松下 正也安部 理柁原 昭夫小林 節雄
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1973 年 62 巻 12 号 p. 1685-1692

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抄録

1933年にHenrik Sjögrenは乾繰性角結膜炎で同時に唾液分泌低下や耳下腺腫脹を伴う疾患を報告し,後にこのような症候群はSjögren症候群と呼ぼれるようになつた.最近の研究によれば一種の自己免疫疾患として考えられているが,その本態はまだ明らかでなく多くの課題が残されている.当初は一般に外分泌腺の慢性炎症と考えられていたのであるが,本症候群では内分泌能を有する甲状腺の疾患である“慢性甲状腺炎”の合併例もかなり報告されている.しかし,内分泌腺,外分泌腺を併存した膵臓にかんする報告はきわめて少ない.最近われわれは膵外分泌機能低下を認めたSjögren症候群を経験した.症例は70才,女性で,眼のチクチクする感じと歯肉痛を主訴とし,入院精査の結果乾燥性角結膜炎,唾液分泌低下,強皮症が証明されSjögren症候群と診断された.さらに慢性甲状腺炎,高脂血症,十二指腸潰瘍および十二指腸憩室が認められた.膵外分泌能検査では,pancreozymin-secretin testにてセレクチン投与後60分の膵液排出量は1.Om1/kgと低下し,重炭酸塩濃度の最高値は66.1mEq/1と低く,アミラーゼ総排出量は2,063u/kgと減少傾向を示し,総合判定では膵外分泌機能は中等度低下していた.膵内分泌,すなわちβ-細胞からのインスリン分泌は年令を考慮し,わずかに低下傾向がみられた。本症例では主として膵の外分泌機能が低下していたが,この意味づけについては今後検討していぎたい.

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