日本内科学会雑誌
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家族性低K血症の2例とその病因にかんする考察
工藤 信一有我 由紀夫三浦 正春山 和見山形 陽福地 総逸
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1976 年 65 巻 2 号 p. 158-165

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抄録

われわれは家族性低K血症の一家系を経験した.低K血を有する症例は4例で,うち2例について血清および尿中Na, K,血漿レニン活性,血漿アルドステロン含量,酸塩基平衡の動態,循環血液量およびアンギオテンシンIIに対する血管感受性を検討した.その結果,腎よりのNa喪失傾向を認めなかつたが, K喪失傾向を疑わせる所見を得た.血漿レニン活性はそれぞれ10.71, 9.99ng/ml/hと高く,血漿アルドステロン含量はそれぞれ5.58~29.85ng/dl, 2.10~6.45ng/dlと正常~高値を示した.アンギオテンシンIIに対する血管感受性は正常であつた.腎病理所見では症例1において傍糸球体装置の軽度の肥大がみられたが症例2では認められなかつた.すなわち,レニン-アンギオテンシン系の亢進がありながら血圧が正常であつたのでBartter症候群を疑つた.しかしBartter症候群の診断に必須の条件であるアンギオテンシンIIに対する血管感受性の低下と明らかな傍糸球体装置の過形成がみとめられずNa喪失傾向もない事よりBartter症候群を否定した.本症例の腎病理組織像および尿検査は正常であつたので腎の機能的異常によりK排泄が増加し,低K血を来たしたものと推測した.

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