日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
胃切除後に発症して,舞踏病様不随意運動を伴い,インスリンに対する自己抗体を証明しえた低血糖症の1例
芹澤 剛井廻 道夫澤田 皓史平井 俊策井上 剛輔吉川 政己河津 捷二梶沼 宏
著者情報
ジャーナル フリー

1977 年 66 巻 5 号 p. 527-534

詳細
抄録

比較的最近発症した,舞踏病様不随意運動と,軽度の意識消失発作を主訴とする59才の男が,脳波検査中に半昏睡に陥つて救急入院した.発作時の血糖値は46mg/dlであり,数日後に行なつた100g GTTでは, 180分に血糖値が30mg/dlとなつて半昏睡となつた.インスローマを疑い,各種検査を行なつたがその可能性は否定された.患者の空腹時血清について,二抗体法によるIRIの検出を行なつたところ, 772.6μU/mlの値を得た.また,血清中より, 125I-insulinに対する大量の結合抗体を認めた.この抗体がIgGのκ型であり,従来より自己免疫性のインスリン抗体と考えられているものと一致していること,および,患者にインスリン製剤を使用したことがなく,インスリン製剤中に含まれる不純物である, a-componentに対する抗体が証明されなかつた点より,自己免疫機序による低血糖症候群の1例であると考えた.不随意運動を中心とする神経症状は,低血糖による中枢神経系の障害と考えられ,血中IRI,およびインスリン抗体が自然に減少したのに伴い低血糖症状の軽快と平行して著明な改善を見た.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top