1988 年 77 巻 5 号 p. 700-704
症例は39才,男性. 28才時に全身性エリテマトーデスの診断にて,以後ステロイド療法が施行された. 34才時,胸痛が出現し急性心筋梗塞と診断された. 36才時に言語障害と右不全麻痺が出現し,脳梗塞を合併した. 39才時,二度目の心筋梗塞発作で死亡した.剖検上,全身の著しい動脈硬化性病変を認め,特に冠状動脈と中大脳動脈に器質化血栓を伴うアテローム性動脈硬化症が認められた.全身性エリテマトーデス症例における動脈硬化促進因子については,全身性エリテマトーデス固有の血管炎・血栓をきたしやすい病態,ステロイド長期投与の影響の他に,高血圧,高脂血症,大量喫煙などの多様な因子の存在も重要な役割を果たしていると考えられた.