日本内科学会雑誌
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粘膜免疫
名倉 宏
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1995 年 84 巻 4 号 p. 632-639

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抄録

粘膜免疫機構は,生体内への有害な抗原の侵入を阻止するとともに,抗原侵襲により障害された粘膜組織を修復することにより,粘膜系の臓器組織の機能と形態の恒常性の維持にあたっている.粘膜免疫機構はさらに全身の過剰な炎症免疫反応を抑制することが知られている.この粘膜免疫機構を利用した,病原微生物の感染を予防するための経口ワクチンの開発のほか,自己免疫疾患やアレルギー疾患の治療の試みがなされている.この免疫系を司るリンパ装置が消化管ではPeyer板をはじめとした腸管付属リンパ装置で,粘膜免疫機構のinductive siteとして中心的な役割を果している.粘膜では,このリンパ装置で抗原刺激により分化成熟したTリンパ球や, Bリンパ球から分化した形質細胞で産生されたIgAによる抗原侵入の阻止や免疫反応の制御が行われ,粘膜免疫機構のeffector siteを構成している.近年この免疫反応の神経内分泌系による制御機構が解明されつつある.

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