1996 年 85 巻 5 号 p. 725-730
AIDSでは中枢神経系も主要な標的臓器の一つである.神経障害はHIV-1原発性感染症,日和見感染症,悪性腫瘍,脳血管障害,治療に伴う合併症に大別される.一般臓器の日和見感染が克服され,延命するにつれ,治療困難な神経合併症をみる機会が増加している.なかでも痴呆状態をきたすHIV脳症は臨床のみならず社会的にも重要な問題を持ち,その病因解明と,治療法の確立が焦眉の課題となっている. HIV-1感染に伴う主要神経障害を概説し, HIV感染症が神経内科領域の疾患であることを強調したい.