日本内科学会雑誌
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糸球体腎炎の分子生物学的診断
吉村 吾志夫
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1996 年 85 巻 7 号 p. 1165-1170

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抄録

生検腎組織から得られる情報は従来の光顕,電顕および蛍光抗体法に加えて,組織上において特定の遺伝子の発現とその局在を明らかにするin situ hybridization法(ISH)の普及に伴い飛躍的に増加しつつある.実験腎炎における糸球体病変のメディエーターとして最も重要視された代表格の血小板由来増殖因子(PDGF)やTGF-βはヒトの糸球体障害においてもそれらの生物学的作用から予測される変化と相関して発現することが確認された.またこれらの因子の発現細胞としてのメサンギウム細胞の重要性も再認識された.糸球体内における種々の細胞外基質の蓄積は糸球体硬化への進展において重要である.細胞外基質蓄積がその産生増加のみでなく,それらの分解系とのアンバランスの異常の結果生ずることも,基質タンパクやその分解酵素群の遺伝子発現の面から明らかにされつつある.今後は, ISHのより広い普及による,より多くの情報の集積とともに,さらに精度の高いテクニックの生検腎組織への導入が期待される.

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