1999 年 88 巻 12 号 p. 2342-2347
肺血栓・塞栓症は救急疾患の一つであり,軽症から重症に至るまで多彩である.近年本邦でも増加傾向にあるが,原因として本疾患に対する認識の高さ,診断技術の進歩,生活様式の変化などが指摘されている.診断は本疾患を常に鑑別診断の一つとして捉え,危険因子が存在する場合には積極的な診断アプローチを行わなければならない.なぜなら来治療であればその死亡率は30~38%といわれ,さらに急性期死亡は発症から24時間以内,多くは1時間以内であり,加えて多くは予防可能だからである.診断では心臓超音波検査,胸部造影CT検査の普及があげられる.治療は抗凝固療法が中心であるが,重症例では血栓溶解療法,外科療法があげられるが,最近では経皮的心肺補助(PCPS)による救命例の報告が増加している.