トロンボポエチン(TPO)は,血小板産生を促進する造血因子としてクローニングされ,数多くのin vitroの研究やノックアウトマウスの結果から, TPOは巨核球系細胞の増殖・分化制御において最も重要な造血因子であることが明らかとなってきた.最近, TPO受容体c-mplは巨核球系細胞のみでなく,造血系を再構築する能力のある多能性造血幹細胞(PHSC)にも発現していることが証明された.また, TPOは単独あるいはIL-3, SCFなどの造血因子と協調してPHSCをPHSCの性格を維持したまま増幅させる能力を有していた.更に, TPOのin vivoへの投与は,抗癌剤などによる骨髄抑制後の血小板数の回復ばかりでなく,貧血や白血球数の回復にも有効であること,末梢血への幹細胞の動員作用も有していることが示された.今後, TPOは血小板増加促進因子としてのみでなく, in vitro, in vivoでの造血幹細胞に対する増殖誘導因子としてもその臨床応用が期待される.