2004 年 93 巻 5 号 p. 1012-1016
糖尿病性腎症を原疾患とする透析療法導入症例が急増しており,臨床的のみならず社会的問題となっている.これまでに糖尿病性腎症を対象とした多くのランダム化比較試験が行われ,糖尿病性腎症の治療方針はほぼ固まってきた.新しい経口血糖降下薬,インスリン製剤,降圧薬が開発され,少なくとも早期腎症の発症・進展は大幅に抑制されてきていると考えられる.従って,透析療法に導入される糖尿病性腎症例の増加は,医療機関未受診・受診中断糖尿病症例の存在,および治療目標値の達成が未だに困難であることに起因していると推定される.これらを解決するためには,糖尿病症例の医療機関への定期的な受診を促すこと,血糖.血圧コントロール不良例に対する新しいアプローチ,オーダーメイド医療を目指した腎症感受性遺伝子の同定,が重要であると考えられる.