抄録
1984 年に国の重要無形民俗文化財に指定された「アイヌ古式舞踊」について、文化政策の視点からその経緯を検証する。それまで多くの先行研究が「音楽」や「文学(口承伝承)」の分野でされてきたにもかかわらず、「古式」「舞踊」という文化財名称となった背景について、文化財行政に影響のあった二人の著者、知里真志保と本田安次の原稿をもとに検討した。本田のテキストが知里らの先行研究を単純化している点と、「舞踊/踊り」という概念に注目している点を指摘し、結論として文化財指定に当時の民俗芸能研究が内包していたイデオロギーが強く影響している点を指摘した。