教育方法学研究
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授業における高校教師のフロー体験に内在する実践的意義
木村 優
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2011 年 36 巻 p. 25-37

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抄録

本研究は,高校教師10名を対象とした授業観察,面接,ESM(経験抽出法)による質問紙調査を実施し,授業中に教師が経験する快感情と認知,動機づけ,行動との関連,教師が快感情を強く経験する授業における教師-生徒間の相互作用を分析することで,授業における教師のフロー体験に内在する実践的意義を検討した。その結果,(1)教師は授業の挑戦水準と自己の能力水準を高く評価する授業で喜びや楽しさを強く経験し,同時に注意集中といった認知能力,生徒に対する積極的な働きかけや活力といった活動性,授業への専心没頭と統制感が高まる,(2)教師が快感情を経験する授業中の生徒の行為として,説明傾聴,生徒間の意見の交流,自発的発言,新視点・解釈の提起,予想外発言などの積極的授業参加行動が明らかとなり,教師の経験がフロー状態に近づく授業では説明,問いかけという働きかけに対する明確なフィードバックとして上記行為が多く生起する,(3)教師が授業中に楽しさを経験するのは自らの授業準備が充実し,生徒の発言に対する即興的対応が成功して円滑に授業が展開したとき,さらに,生徒と協働で学習課題を探究するとき,の3点が主に明らかとなった。以上の知見から,授業における快感情経験あるいはフロー体験は教師の職務への内発的動機づけや自己効力感を高めるだけではなく,即興性や創造性などの専門性の発揮を促す重要な役割を果たしていることが示された。

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© 2011 日本教育方法学会
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