教育方法学研究
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生活創造としての学習 : 放課後教育プロジェクトにおける協働活動の生成
山住 勝広冨澤 美千子伊藤 大輔蓮見 二郎
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2011 年 36 巻 p. 133-143

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抄録

本論文は,私たちの研究グループが,大学と地域の公立小学校とのパートナーシップにもとづき,学校外の多様なパートナーと協働・交流しながら進めてきた,放課後教育活動の試みを取り上げ,その実践の中で生成している,子どもたちの学習の拡張的な文脈を分析し,その意義を明らかにしようとするものである。こうしたハイブリッドな放課後学習活動の場を,私たちは「ニュースクール」(NS)と名づけ,大学近隣の公立小学校2校に通う子どもたちが異学年混合のグループによって,地域の伝統野菜の栽培・普及をテーマに,有機農業やエコロジー,食や調理について学びあう協働のプロジェクト学習の実践開発を進めている。この中でも本論文ではとくに,「協働自治」の原理にもとづき,子どもたち自身によって創造されていった「児童劇」の実践に焦点化し,そこにおける学習の協働的な拡張について分析し,その意味を明らかにした。また,コンピュータやインターネットの活用が,教科書や教室の壁に閉ざされた学習のあり方を拡張していくことを,NSでの事例を通して検討した。こうして,NSにおける子どもたちと多様なパートナーとのプロジェクトは,学習の対象や組織を生活活動やコミュニティの創造へと拡張していくものであり,学校に伝統的に見られるような学習のカプセル化という制度的な境界を超えていく,新たな協働的学習活動の創造であることを結論づけた。

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© 2011 日本教育方法学会
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